侮辱罪の厳罰化は果たして、誹謗中傷の抑止に寄与するのでしょうか?侮辱罪の厳罰化についてコメントする弁護士のポジショントークにも強い違和感を覚えます。

刑法の侮辱罪の法定刑を引き上げて厳罰化する改正刑法が成立した事から、フジテレビの番組の悪質極まりない演出により誹謗中傷を受け自ら命を絶ってしました木村花さんの母の響子氏が会見を行ったことを毎日新聞は13日付で『木村花さん母「やっと、という思いが強い」 改正刑法、侮辱罪厳罰化』として以下のとおり配信した。

刑法の侮辱罪の法定刑を引き上げて厳罰化する改正刑法が成立した13日、2020年にインターネット上で誹謗(ひぼう)中傷された後に急死したプロレスラーの木村花さん(当時22歳)の母響子さん(45)が東京・永田町で記者会見を開いた。

 響子さんは、ネット上の中傷被害の深刻な実情を社会に訴える活動を続けており、今回の法改正のきっかけになった。「ネット上の中傷は、本当に犯罪だということを知ってほしかった」と振り返り、改正法成立について「これまでの侮辱罪では抑止力にならなかった。私の中では『やっと』という思いが強い。(支持してくれた人たちに)感謝の思いでいっぱい」と歓迎した。

 一方で「成立して終わりではなく、ここからが始まり。厳罰化に反対している人たちがいるが、厳罰化が言論封じに使われ、悪用されることに反対しているのではないか」と問題提起し、「厳罰化をどう使っていくか、一人一人のモラルが問われている」と述べて、安易なネット上の書き込みに改めて警鐘を鳴らした。

 会見には、池袋暴走事故で妻子を失った松永拓也さん(35)も同席した。松永さんもネット交流サービス(SNS)で中傷された経験があり「見ず知らずの人に中傷され、胸が苦しくなるほど心を痛めた。人によっては命を落としてしまう場合もある。(今回の法改正は)侮辱罪の『厳罰化』ではなく、ネット社会に即した『適正化』だ」と指摘。「形だけの厳罰化ではなく、罰則がしっかり運用されることが抑止につながる。厳罰化されたことが社会全体に周知されることが大事」と訴えた。

引用以上

 木村氏、松永氏の思いには誰もが共感を寄せると思われるし、誹謗中傷はなくすべきであるという事に異論はなく、木村氏が「成立して終わりではなく、ここからが始まり。厳罰化に反対している人たちがいるが、厳罰化が言論封じに使われ、悪用されることに反対しているのではないか」と問題を提起している事にも共感を寄せる人が多いと思う。まさに木村氏の述べるとおり、侮辱罪の「悪用」については、誰もが注意をしていくべきであり自分に都合の悪い言説を「侮辱」と切り取りして言論の封殺を図る者が出てくる事は間違いないと考えている。

 この木村氏らの会見には佐藤大和弁護士も同席なさったようで、同弁護士の発言をABEMATIMESは『一部メディアの方々によって被害が深刻化、自殺が誘引されてしまっている」侮辱罪の“厳罰化”受けた会見で弁護士』として以下のとおり報じている。

インターネット上の誹謗中傷への対策を強化するため「侮辱罪」の厳罰化を盛り込んだ改正刑法が成立した。

 木村響子さんらと会見に臨んだレイ法律事務所の佐藤大和弁護士は「個人的な意見」とした上で、「一部メディアによる正当な理由のない、両論併記しない記事、フェイクニュース、噂話ばかりの悪意のある記事、隠し撮り・プライバシー侵害の記事、誹謗中傷を煽るような記事の配信についても被害は年々深刻化していると思う。もちろん多くのメディアはちゃんとした方々だと思っているが、一部のメディアの方々によって被害は深刻化、それによって自殺が誘引されてしまっているところがある」と指摘。

 「メディアの皆様には政治家の方々、権力を持っている方々をしっかりと見て頂きたい、そして誹謗中傷を煽るようなこと記事を配信しない、ということについても求めてきたい。メディアの方々に自制するところがない以上、何かしらのルールが議論されていく時代に入ってきたのではないか」と呼びかけた。

引用以上

 まったく佐藤弁護士の述べる内容には異論はない。誹謗中傷を結果的に煽るような記事の配信は問題であろうし、一部メディアの「裏を取らない」取材における報道被害は深刻であることは間違いないだろう。

 良い例が、先般一審判決が下された「農業アイドル」の自殺についての損害賠償請求事件についての報道であろう。原告弁護団は被告会社らをあたかも自殺の元凶として指摘した記者会見を行ったわけだが、実際には被告会社側と事前交渉も事実確認も行っていなかったわけだ。要するに「裏を取っていない」と筆者は言いたいわけだ。

【参考リンク】

 傍聴記録倉庫 

10月11日 農業アイドル自殺訴訟 大本事件・第四訴訟・原告側記者会見 詳報

そんなことから「両論併記しない」結果的に「誹謗中傷を煽る」報道がなされ、原告当事者及び被告会社・関係者に対する誹謗中傷が続発する事態になったからである。そんな記者会見においてクラウドファンディングで訴訟費用を募ることも告知したわけであり、到底感心できる行動ではないと思うのである。この訴訟に深く関与した佐藤大和弁護士が上記のような報道批判を行うのであれば、まずはこの農業アイドル訴訟の報道のありかたを日本エンターテナーライツ協会や一般社団法人リーガルファンディングにおいて、自己批判を行うべきであろう。一部メディアにおいて、同訴訟の被告会社らが極悪人扱いされたりしたのは事実であり、そのような報道に対して、佐藤大和弁護士をはじめとする同訴訟の原告代理人らが自制を促すような言動などを行ったとは現時点で確認できておらず(そんな内容があれば教えてください訂正謝罪します)、佐藤弁護士の述べる上記引用記事の内容が単なるポジショントークとしか捉えられないからである。

 この農業アイドル訴訟の判決文の裁判所の判断の要旨の主要部分を山口三尊氏が書き起こししているので、興味のある方はご覧いただきたいと思う。

【参考リンク】

220613農業アイドル自〇事件判決文 証券非行被害者救済ボランティアのブログ

 判決の内容や事実認定についての意見は避けるが、上記の判決文を確認すれば、リーガルファンディングがクラウドファンディングで訴訟費用等を募っている理由に記された内容がほぼ認められていない事が確認できると思う。

 もちろんこの事件は控訴されており、控訴審の帰趨も見定めたうえで最終的な結論を出すべきではあると思うが、誹謗中傷を煽るな!両論併記をしろと述べる弁護士が関与しながらも、そのネタを投下するような表現を放置することは果たして適切なのであろうか?

 侮辱罪の厳罰化は必要であるかもしれないが、適切な批判を封殺するための「侮辱罪」の悪用をさせてはならない事は確かであろう。そのような事からも、農業アイドル訴訟における被告会社らが訴訟提起した原告弁護団らへの損害賠償請求事件の今後の行方に注目していきたいと思う。通常は代理人弁護士に対しての賠償請求の認容には高いハードルがあると思うのであるが、この訴訟においてもし請求が認容されるような事があれば、画期的な事であると思われるからだ。

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