6月8日付の官報で杉山程彦弁護士(神奈川)の懲戒処分が以下のとおり掲載されていた。
懲 戒 の 処 分 公 告
弁護士法第64条第63項の規定により下記のとおり公告します。
記
1 処分をした弁護士会 神奈川県弁護士会
2 処分を受けた弁護士氏名 杉山程彦 登録番号 37300
事務所 神奈川県横須賀市若松町3-4山田ビル プレミア法律事務所
3 処分の内容 戒告
4 処分の効力が生じた日 令和3年4月27日
令和3年5 月24 日 日本弁護士連合会
引用以上
杉山弁護士は、「悪いのは家庭裁判所と人権派弁護士です。奥さまもまた家庭裁判所と人権派弁護士の被害者です。」とTwitterで告知している弁護士であり、積極的に子供の「連れ去り被害」についての情報発信を行っている弁護士である。
杉山弁護士の信念は理解するが、ご自身の主張する「実子誘拐」であるとか、「弁護士が子の連れ去りを指示する」などという断定的な判断を随時Twitterなどに投稿する事は評価が分かれるだろうと思われる。
今回の懲戒処分の事由は、自由と正義に掲載されるまでは分からないが、杉山弁護士のツイートを巡って他の弁護士との間で「懲戒」などの文言の記載が確認できるので、おそらくそのようなやり取りが懲戒事由となったのではないかと推測している。
現在は簡単に情報発信ができる時代となったことから、弁護士のみならず容易に自らの意見を公表できることになったわけだが、そのおかげでウェブ上における「誹謗中傷」の問題もクローズアップされているわけである。
弁護士が自らの意見などを公表する事には何の問題もないが、たとえば離婚問題や親権問題について、自分の認識と反対の意見にいちいち突っかかる事は、かえって自分自身の主張が受け入れられなくなる素地を作っている事に気づいて欲しいと思われる。
最近は共同親権を主張する(どう考えても独自の都合よい解釈としか思えない)集団が価値観の異なる弁護士事務所に「街宣」を掛けたという事案もあり、かえって共同親権への理解を妨げることを指摘したばかりである。
【参考リンク】
共同親権や養育費の問題については子供の養育・教育のためになるかどうかという視点だけで検討すべきでしょう、価値観の異なる弁護士に街宣をかけてもチンピラ集団としか多くの人は思わないはずです
弁護士が法の不備や社会制度についての問題提起を行う事はある意味当然であろうが、その情報発信の際には、意見が対立する相手方などへの反論などについては節度をわきまえて、相手をバカ呼ばわりしたり、犯罪者扱いなどをすることは避けたほうが良い事は間違いないし、強硬な意見というのは同調者を増やしやすい側面もあるが、逆に「アンチ」を増やす原因にもなるわけであり、弁護士が世論に訴えかけるのであれば、過激な表現よりも「分かりやすく」情報発信を行うべきではないだろうか?
子供の「連れ去り」のような事態がなぜ発生したかを考えれば、連れ去った側が元配偶者に愛想を尽かしたという事が大きな原因であり、その理由が何であれ、元配偶者が婚姻生活を継続できないという判断をしたことを受け入れたうえでの解決を図ることが最善であると思われるのであるが、そのあたりを理解できないからこそ粗暴な意見を述べるのが共同親権を主張する人たちの特徴に思えてしまう。上記の参考リンクで述べたように共同親権や養育費の問題は、子供の養育・教育のためになるかという視点で検討されるべきなのである。
弁護士だからこそできる、論理的で理知的な情報発信こそが求められているはずで、景気の良い暴論を求める人たちに迎合することは危険でしかない事を、積極的に情報発信する弁護士にはご理解頂きたいと思う。また、最近は弁護士本人が原告で弁護士のTwitterなどの情報発信についての損害賠償請求訴訟を提起している者もいるようだが、今回の杉山弁護士の懲戒事由と思われるような発言に対してならともかく、単なる意見や論評を「名誉棄損」と主張しているとしか思えない訴訟もあるようだ。
そんな訴訟を提起しているセンセイも、Twitter上で熱い議論を行っているセンセイも以下の弁護士職務基本規程はご存じなんだろうから品位を保つために節度を持って同業者と付き合うべきであるはずだ。
(名誉の尊重)
第七十条 弁護士は他の弁護士、弁護士法人及び外国法事務弁護士(以下弁護士等という)との関係において、相互に名誉と信義を重んじる。
(弁護士に対する不利益行為)
第七十一条 弁護士は、信義に反して他の弁護士等を不利益に陥れてはならない。
弁護士なんだから怒りよりも、名誉と信義を重んじた情報発信をお願いしたい。