日弁連は12日付で2018年度の会務執行方針を同連合会のウェブサイトで公表した。
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上記の会務執行方針の中の「第13 弁護士自治を堅持する方策等」の第1項不祥事対策の部分を以下に引用する。
1 不祥事対策
日弁連は、弁護士不祥事が市民の信頼を大きく揺るがすものであることを踏まえ、多角的な観点から対策を講じてきました。昨年10月には預り金等の適正管理の強化策及び依頼者見舞金制度がスタートし、不祥事対策が更に前進しました。
さらに、弁護士会の市民窓口及び紛議調停の機能強化、懲戒制度の運用面での工夫(会請求や事前公表等)並びに懲戒事例データベースの整備検討など、実務面の対策を推進するとともに、会員への支援策(メンタルヘルスカウンセリングや会員サポート窓口等)の充実を図ります。
引用以上
上記にある通り、社会正義の実現を使命とする弁護士不祥事が弁護士自治の信託者である一般国民の信頼を大きく揺るがせることは確かな事である。しかしながら、日弁連が多角的な観点から不祥事防止対策を行っているとは考えられない。
日弁連は預り金の適正管理の強化策や依頼者見舞金制度の運用で不祥事対策が「前進」したと自画自賛しているのである。大体、弁護士個人裁量で引き出し可能な「預り金」にいくら規制を行っても、依頼者に断りなくカネを下ろして使い込めるのであるから、日弁連の述べる不祥事対策の「前進」は虚言でしかないだろう。
本気で預り金の使い込みを防ぐためには「カルパ制度」の導入が必須であり、不祥事防止には「カネに追われた」弁護士が依頼者のカネに手を付けないように弁護士に対する緊急融資制度を創設したほうがはるかに効果的なのである。
それに市民窓口・紛議調停の機能強化や懲戒制度の運用面の工夫というが、昨年依頼者に大混乱をもたらしたアディーレ法律事務所の懲戒処分は事前公表などされていないし、現在も新興事務所大手のベリーベスト法律事務所への懲戒処分も事前公表などされていないのが現状である。そんな中でベリーベスト法律事務所は実質的な「懲戒逃れ」を図るために法人を3つに分散しているのが現状であり、なにが運用面の工夫であるのか全く理解できない。
また懲戒事例のデータベース化は弁護士自治を考える会がすでに作成運用しているのであるから、同会に協力をもとめるべきであろう。
弁護士不祥事対策は巧言令色を用いることで、やっているフリをするよりも、早期に「カルパ制度」を導入することが必要であることを、いい加減に日弁連の役員様方にはご自覚頂きたいものだ。