アディーレ法律事務所への懲戒処分は「世代間対立」の結果なのか?

産経新聞WESTは24日付で「業務停止アディーレ「弁護士法人として品位を失う行為…」執行部、新興勢力を“断罪” 世代間の対立鮮明に」として以下のリンクの記事を配信した。

 

【参考リンク】

業務停止アディーレ「弁護士法人として品位を失う行為…」執行部、新興勢力を“断罪” 世代間の対立鮮明に

 

 この記事は、アディーレを代表とするネットで集客し依頼者のニーズに応えるとして急成長した「新興勢力」と、旧来の弁護士会の考え方の対立がある事を述べている。その中でベリーベスト法律事務所の代表の酒井将弁護士がアディーレへの処分が「重すぎる」と主張している事は理解するが、「萎縮効果を狙っている」という主張には感心しない。

アディーレへの懲戒処分の問題は「処分の均衡」の問題であり、アディーレが不適切な広告を出していた事は認めているのであるから、適切な広告を行う弁護士・弁護士法人には「萎縮効果」など無いことは自明であろう。

また、酒井弁護士は「弁護士会への苦情件数が年10回以上」という不掲載基準に引っかかるために日弁連運営の「ひまわり求人求職ナビ」への求人情報の掲載が認められていない事を問題視し、「依頼者が約2万人もいたら一定数の苦情が出るのは避けられない」とも述べて、このような求人に対する苦情数を基にした規制は「事務所を大きくできないようにする意図が透けて見える」と主張している。

筆者は、求人に対する規制を日弁連が行うであれば、その趣旨となぜ10回という苦情の回数を基準としているのかを日弁連は明らかにするべきではあると考える。しかし、依頼者の数が多いから一定数の苦情が出るのは避けられないという主張はどうかと、考える。

なぜなら、苦情は最初はベリーベスト法律事務所になされるのが普通である。この最初の苦情の時点で事務所側が誠実な対応を行えば所属弁護士会に対して、そんなに苦情を言う人はいないのではないかと考えるからである。確かに弁護士業もビジネスであるが、一定の客がいるから苦情は当然という姿勢には賛同するものは少ないだろう。

現状の弁護士自治には大きな問題点がある事は事実である。しかしながら、弁護士自治ゆえに弁護士の悪い意味での「ビジネス化」「事件あさり」が発生し、大した処分も下されない事も事実である。多くの「新興事務所」は過払い金返還請求で成長を遂げたのであるが、過払い金返還請求が先細りとなって以降は、「未払い残業代請求」「B型肝炎給付金請求」「詐欺返金」など、必死に「シノギ」をあさっているのも事実だろう。あたかも簡単にこのような請求でお金が入ってくるような広告を行う事は決して国民にとって良い状況では無いだろう。またむやみに依頼者に迎合し無理筋の主張を行うような弁護士の増加も、国民にとっては良い状況では無いはずである。

以前にも書いたが、一部の新興事務所は暴力団を背景とする「競馬情報詐欺」集団の依頼を受け、犯罪集団の利益を図るために騙し取った金の「値切り」を業務にしていた事を考えれば犯罪者の利益を図る事を「ビジネス」と主張する弁護士が出現しないとも限らないと筆者は考えている。

弁護士は、以前は高額所得者であったからこそ、「ノブレスオブリージュ」とて、自分の信念で、手弁当で裁判などを行う事もできたのである。あの布施辰治でさえ、経済的な基盤があったからこそ、様々な人権救済的な事件に関与できたと述懐しているぐらいなのである。司法制度改革以降、弁護士の所得は下がり、稼げる弁護士と食えない弁護士の二極化は年々進んでいる。そんな中で「安定」を得るための一つの手段が大規模新興事務所への「就職」であろう。しかしながら、大規模な新興事務所と言っても決して安泰ではなく、昨年逃亡した菅谷公彦弁護士のような事例もあるとおり、その懐具合まではわからない。

弁護士が信念を貫き業務を行うためには、ある程度の経済力は必須であり、それは弁護士不祥事を防止するためにも必要なものである。弁護士が大増員された事により、「事件あさり」は日常化し、その分の広告コストが依頼者に結果的に転嫁され、依頼者の利益にもならないし、弁護士も儲からないし、結果的に広告屋がもうかるだけなのである。だから、非弁広告屋が弁護士を「飼って」非弁活動を行うのである。

酒井弁護士は「顧客のニーズに応えた分かりやすいサービスを提供しているから依頼者が集まる。金もうけだけというのは偏見だ。」と述べているが、顧客のニーズに応えた分かりやすいサービスを提供しているなら、苦情などほとんど出ないのではないだろうかと思われるが、そうではないのだろうか。

筆者の考えでは弁護士は確かに「商売」であるが、弁護士自身の「信念」「哲学」があってこその「商売」であり、そのようなものを持たない連中が「商売」を「ビジネス」と言い換える事は自らの強欲さを隠蔽するだけの事であろう。弁護士だけに限らず、専門家として士業を行う者には「品位」は必要であり、また各資格者は「誇り」を持って業務を行ってほしいものである。

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