書評 弁護士の格差(朝日新書 著者 秋山謙一郎) せっかく貴重な方々のインタビューの機会を得たのですからもっと深く突っ込んでほしかったですね

ダイヤモンドオンラインで「弁護士業界 疲弊の真相」という企画で記事を配信している秋山謙一郎氏の著作「弁護士の格差」を読んだ。

それなりに取材はしたのであろうが、深い取材にはなっていないと正直なところ筆者は感じた内容であった。

何より違和感を覚えたのは、刑事弁護が儲からないとか国選弁護士の費用が8万円からとか述べている、刑事弁護の部分である。国選の費用は8万円ではなく、以下のリンクのとおりになっている。

 

【参考リンク】

国選弁護報酬基準の概要

 

また、国選弁護の費用は、被疑者・被告人に請求がなされることもあり(基本的には経済的に困窮している者に対しての費用免除が基本【刑訴法181】自動車の速度違反などで公判請求となり、国選弁護人が付いた場合は、ほぼ被告人に費用の請求がなされます)国選弁護が無条件で無料なわけでもない事も述べておいてほしかった。この本では刑事弁護は割に合わないと述べられているが、一部のヤメ検のように20日間で2000万円をボッタくりする弁護士もいることや、この書籍では「特定の暴力団関係者からのリピーター顧客が増えると警察当局から目を付けられる傾向がある」との元弁護士の言葉も掲載されているが、そんな事が事実であれば多くの暴力団御用達の「ヤメ検」は警察に目を付けられていることになるが、適切な弁護活動を行っていれば、そのような事はまずないだろう。不適切な弁護活動を行う連中には捜査機関は「証人威迫」などで告発することもあるだろうが、どんな極悪人であろうと被疑者・被告人の権利を守るのが受任した弁護士の役割なのであるから、証拠隠滅や犯人隠避などの行動を取らなければ警察だって何もしようがないのである。

そのほか、「法務局でケンカ」したことを自らのブログにアップ(その後法務局職員に謝罪したそうです)した坂本尚志弁護士(東京)や、いくら理由があろうと3度の懲戒処分を受けている太田真也弁護士(東京)に取材し、彼らの意見なども紹介されているが、せっかくこのような弁護士たちを取材する機会に恵まれたのであれば、坂本弁護士には、若手弁護士のためにも、即独の際にどのように事務所開業資金を準備し、どのような基準で事務所スタッフを募集・採用したのかを聞くと同時に、「法務局でケンカ」の理由と、その後の謝罪の詳細を取材してほしかったし、太田弁護士には過去の懲戒処分に対する意見などを聞いて、業務停止処分時の生活などを聞けば実りが多い書籍になったのではないかと思われる。

弁護士の「格差」に焦点を絞ったのであれば、格差の頂点であろう渉外事務所のボスや超有名弁護士(弘中センセー、達紘センセーなど)や、超問題弁護士(諸永芳春センセー、笠井浩二センセーとか)にお話を聞けば、もっと弁護士間の「格差」が際立ったのではないだろうか?

またアディーレ法律事務所に対する懲戒処分の捉え方も違和感を覚える。弁護士はサービス業(ビジネス)という側面はあるにしても法律家としての「矩」を超えてはいけないという事を示したのが、アディーレの業務停止処分の教訓と述べているが、ビジネス以前に「犯罪」というべき「横領」行為や、「着手金詐欺」としか言いようがない佐々木寛(東京)の行ったような、詐欺被害者への勧誘行為(実際は覚せい剤中毒のホンマの所業)は「矩」などとうに超えていることや、懲戒処分が均衡を欠いており、果たしてアディーレの業務停止についての懲戒処分が妥当であったかの検証がないことは、この書籍が弁護士の「格差」をテーマにしていたとしても、突っ込むべきところであったのではないだろうか。

しかしながら、この書籍の中には弁護士のスキルの「格差」や「依頼者に寄り添う」弁護士の問題点も指摘されており有益な部分も一般読者に多いはずである。

弁護士の問題に一般の方が興味を持つのは健全な弁護士自治のためにも役に立つはずである。そんな意味では良い書籍と言えるだろう。

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