朝日新聞デジタルは「滑って転んで賠償請求、相次ぐ 「防滑」取り組み進む」として以下の記事を29日配信した。
お店などで滑って転んでけがをした人が、「床に問題があった」として裁判を起こす例が相次いでいる。高齢者の死亡原因のうち、転倒事故は年間約5千件で、交通事故を上回る。未然防止のため、床を滑りにくくする「防滑(ぼうかつ)」に取り組む事業者も出てきた。
■店の責任?客の過失?
大阪市の50代主婦は4月、市内のリサイクル店を相手取り約800万円の賠償を求める裁判を起こした。雨でぬれた床で滑り、足の靱帯(じんたい)を切るけがを負った。入院生活は約1カ月に及んだ。
主婦側は訴状で、「客が転ばないようにする義務があった」と主張。足拭きマットを敷いたり、床の清掃回数を増やしたりするべきだったと訴えている。一方、店側は「転倒には女性の過失が関係している」として争う姿勢だ。
同様の訴訟では、店側に賠償を命じるケースも出ている。岡山地裁は2013年、「ショッピングセンターの床に落ちていたアイスクリームで滑って転んだ」とする70代女性の訴えを認め、店側に約860万円の支払いを命令。大阪地裁では「餃子(ギョーザ)の王将」店内で転んだ40代女性に対し、店側が解決金100万円を支払う和解が15年に成立した。
「昔なら『自分が悪い』となった事案でも、ここ10年ほどで提訴になることが増えたように感じます」。建物内での事故訴訟に詳しい佐藤貴美弁護士(第一東京弁護士会)は話す。インターネットの普及に伴い、同種事故の訴訟情報が入手しやすくなったほか、権利意識の向上も背景にあるとみている。ただ、訴訟を起こしても、不注意だったとして主張が全面的に認められることはまれという。
引用以上
記事中にあるとおり、このような訴訟はよく言えば「権利意識」の向上、実際には肥大化した自意識とカネへの執着の高まり、そして弁護士の「ヤクザ化」ということに尽きるだろう。
一昔前であれば、このようなことで注意義務をネタに賠償請求を受けるような弁護士はごく少数であったはずだ。重過失といえるような事が認められない限り賠償請求などは認められないからである。昔なら、この手の請求は暴力団の「シノギ」であったのである。
このような流れは弁護士の増員と共に法テラスという、依頼者を選別できない窓口ができたことによるものであろう。通常はいわゆる「無理筋」の事件は、依頼者の質も悪く弁護士に真実を告げずに自らに有利なことだけを伝え、着手金は値切り「必ず取れるから成功報酬で」などと持ち掛けるクズのような人間ばかりである。そのような依頼者を通常の弁護士はお断りしていたのである。一部、この手の依頼を受けるのは、その筋に義理のある「欠陥弁護士」か、事務所運営が自転車操業であり目先の僅かなカネが欲しいがために、着手金稼ぎが目的の「カネに追われた」弁護士だけであったのだが、「法テラス」という依頼者の与信をしない組織が発足したことにより、「クレーマー」たちが法的手続きを取ることが多くなってきたと思われる。
弁護士を大増員した結果が、この手の訴訟の増加であるというのであるということであれば、司法制度改革は大失敗であることは間違いない。「因縁」をつけることが権利意識の向上などととらえることが、社会にとって何かの利益があるのか、よく日弁連は考えるべきである。