弁護士に依頼をしても結果が変わる見込みが無ければ非行ではないという単位会・日弁連の見解について

自由と正義2月号は、綱紀審査の運用状況を公表しているが、そのうちの1件は「弁護士の弁護士による弁護士ための弁護士自治」を考察するのに大変興味深い事案であった。以下に内容を引用する。

 

審査相当事案について(その3)

事案の概要

居宅の明渡請求訴訟の被告である綱紀審査申出人(以下「申出人」という)から依頼を受けた対象弁護士が第1回及び第2回口頭弁論期日いずれにおいても答弁書その他の準備書面を提出しないまま欠席した結果、仮執行宣言付敗訴判決を受けたことが弁護士としての品位を失うべき非行にあたるとされた事案。

 

綱紀審査会の議決の理由の要旨

原弁護士会綱紀委員会は申出人の居宅明渡事件に関し、対象弁護士が第1回及び第2回の口頭弁論期日に答弁書その他の準備書面を提出しないまま欠席し、その結果、欠席判決が言い渡されたこと、それにもかかわらずこれらを申出人に伝えないまま訴訟手続を進めたことについて、対象弁護士が口頭弁論期日に欠席したことそれ自体によって申出人に対して具体的な不利益が発生しているわけではないこと等を勘案し、答弁書その他の準備書面を提出せずに期日に欠席したことのみをもって、対象弁護士に弁護士として品位を失うべき非行があったとまで認めることができないとした。

 しかし対象弁護士が事件を受任し、委任状の交付を受けていたにもかかわらず、第1回及び第2回の口頭弁論期日いずれにも答弁書その他の準備書面を提出しないまま欠席し、その結果、仮執行宣言付敗訴判決を受けたことは、理由のいかんを問わず、業務怠慢といわざるを得ない。また仮に対象弁護士が和解を成立させるための戦略として上記の方法を選択したのであれば、その戦略に結審されるリスクが伴うことを申出人に十分説明し、その了解を得るべきであったところ、対象弁護士は、これを怠ったものである。対象弁護士の行為は依頼者である申出人が口頭弁論期日において主張をする機会を失わせる行為であるとともに、申出人の希望する和解を成立させる機会を失わせる行為であって訴訟代理人として適切な事務処理とはいい難い。

対象弁護士のこれらの行為は弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に当たるものと認められる。

 

(3)綱紀審査会の議決の年月日

2015年12月8

引用以上

 

 綱紀審査会の判断は妥当である。この対象弁護士に「懲戒せず」との決定を下した、所属弁護士会と日弁連は猛省すべきである。訴訟の委任を受けながら何らの活動も行わず、訴訟期日に出廷せず、答弁書・準備書面も提出しない行為を特に依頼者に不利益が発生していないから非行では無いという判断は、弁護士が何の仕事もしなくても、依頼者に訴訟の報告をしなくても、弁護士の判断で何をしても結果が変わらないという訴訟であると考えた場合には、何もしなくて問題がないと判断した事と同じなのである。

この審査相当事案の要旨には、対象弁護士がこの訴訟について着手金を受領していたか否かが記載されていないので判断はできないが、こんな内容で着手金などを受領していたら「詐欺行為」と言われても仕方のない事であろう。

こんな行為を対象弁護士の所属会や、日弁連は「非行」ではないと判断した事の理由を弁護士自治の信託者である「国民」にしっかりと説明する必要があるだろう。あまりにも勝手な自治権の行使は、国民に害をなすものでしかなく、弁護士のみの利益を図っていると指摘されても仕方がないのである。

単位弁護士会によっては、懲戒請求についての対象弁護士の弁明書などを一切公開しない会もいまだに存在する。弁護士懲戒制度は極めて恣意的な「同僚裁判」でしかないと思う国民が増加するのも無理はないだろう。

弁護士不祥事増加の現状に即さない、弁護士懲戒制度の改善は必須であろう。

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